クラーク会館の講堂にパイプオルガンが設置されていることをご存じでしょうか? 1966年に導入されたこのオルガンは、1556本のパイプを有し、現在も道内で有数の規模を誇っています。オルガンを所有する国立総合大学は極めて珍しく、他に東京大学駒場キャンパスに小規模な例が見られるのみです。
オルガンの設置を積極的に推進されたのは、クラーク会館の建設(1960年竣工)にあたって指導的な役割を果たされた杉野目晴貞学長(当時)でした。「これからの総合大学は学問の場であると同時に教養文化人として芸術を愛する者を育てる場所であるべき」というの理念の下、氏は、クラーク会館の建設に寄せられた寄付金の一部をオルガンの設置に充てられたのです。
このオルガンを実際に弾かれた哲学者の森有正氏は、この楽器の「乾いた美しい音色」に魅せられていたようです。1970年代初頭、避暑を兼ねた著作のために北大に滞在されていた氏は、毎日のようにこの楽器を演奏されていました。氏にとってのオルガンは、「思索の源泉としての音楽」であり、独自の思想を大成させるうえで重要な糧となったようです。
2002年度からは、全学教育科目「芸術と文学」の一つとしてパイプオルガンを用いた講義が行われるようになりました。北大には、自らの専門分野だけに囚われない豊かな人間性の育成を目指す札幌農学校以来の伝統がありますが、そうした全人教育の一環としてオルガンが位置づけられているのです。
大学主催のコンサートも定期的に開催されています。昨年10月には、チェコ共和国よりオルガニストをお招きして48回目の演奏会が行われ、大好評を博しました。1994年にはパイプオルガン研究会という学生サークルも設立され、近年この楽器が活躍する場面はますます増えてきています。最近では、クラーク会館で行われる様々な学会においても、オルガンの演奏が採り入れられています。
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