Die Orgel

北海道大学クラーク会館大講堂 オルガン

1.沿革


・はじめに

    北海道大学 クラーク会館(通称クラ館) 講堂のオルガンは、 道内では札幌市にある 北星学園大学の チャペル に続いて道内2番目に設置されたパイプオルガンで、 現在も道内で有数の規模を誇るもの です (北星学園は稚内北星短期大学にも パイプオルガンを設置しています)。 また、総合大学のパイプオルガンは、 東京大学教養学部の 900番教室オルガン (ストップ数12, パイプ数570, 1977年竣工) と合わせて国内にたった2台しかありません。

    それゆえ、 クラーク会館のオルガンは ポプラ並木クラーク像 と並んで北大名物の一つ となっています。このオルガンについてご紹介しましょう。

・オルガン建造のきっかけ

    北大の創基80年を記念して学生会館が作られることになったときに、 当時学長としてこの事業を推進された杉野目晴貞先生 ( 理学部創設時の化学教室教授)は、
    これからの総合大学は学問の場であると同時に
    教養文化人として芸術を愛する者を育てる場所である

    という理念を持たれ、卒業生などに募金を呼びかけられました。 その結果、クラーク会館の新営にあたり、 北大創基80周年記念会館建設期成会からの寄贈という形で、 オルガンの設置が実現しました。

・オルガンの設計と組み立て

    現在、 岐阜白川 にオルガン工房を構えられている 辻宏氏 に楽器の規模について考えていただいた上で、 ドイツ・ボンのヨハネス・クライス社 に およそ1080万円でオルガンが発注されました。 3年余の後に製造が完了となったこのオルガンは、 ハンブルク港から 小樽港への船旅を経て、 北大に到着しました。

    到着後は 日独の技師により1ヶ月弱の期間をかけて組み上げられ 1966年5月末に組立と整音が完了しました (クラーク会館自体は1959年に竣工)。 6月6日には当時東京芸大助教授の秋元道雄氏による第一回の演奏会が 収容人数約600人の大講堂で聴衆750人という 盛況の下に行われました。

・竣工後の稼働状況

    その後も創基90周年記念、法学部設立30周年式典をはじめ、 内外の著名なオルガニストを招いての演奏会が行われ、 また哲学者の森有正氏が避暑を兼ねた著作のために札幌を訪れられた折りにも オルガンを演奏されていました。 この時のクラーク会館での演奏はCD化されています。 (森 有正 〜 思索の源泉としての音楽・ 新しく生きること講演とパイプオルガン演奏/ PHILIPS PHCP-3314-5)。

    ところが1985年11月の第30回の演奏会をもって 公開演奏会は中止されてしまいました。 維持費がかかるわりに聴衆の少なかったことが原因のようです。

・息を吹き返したオルガン

    1991年になって、当時の丹保憲仁学生部長(現、北大総長)が オルガンの活用を決められ、 交響楽団による室内楽演奏会でオルガンが使用されました。 大学主催の演奏会もこの頃に再開されました。 さらに1993年の演奏会では当時の深澤和三学生部長(現、北大名誉教授)が、
    オルガンを職員学生にも積極的に開放するし、
    オルガン同好会といったクラブの誕生を期待する
    と話されました。

    これを受けて、 オルガン音楽の演奏と研究を目的とした 北大オルガン研究会が 1994年に 設立されました。 この時、 小林三樹教官(当時、工学部衛生工学教室助教授)が 初代の顧問として設立を手助けして下さいました。 現在、 公認学生団体としてクラーク会館のオルガンを用いた活動を 土曜の夜を中心に行っており、 コンサートも年に数回、開催しております。 学外から演奏者を招いての大学主催のオルガン演奏会も 毎年1〜2回実現しています。

・おわりに

    今後、 このオルガンがますます充実した維持のもとに置かれ、 学内外のみなさんをより一層楽しませるものとして 活躍してくれることを希望しています。 30年以上の歴史の中で、 オルガンの建造・維持・利用促進に御尽力下さった皆様に感謝しつつ、 筆を置きたいと思います。

    なお、 この解説の作成に際し、 えるむ66号(1993年)巻頭の小林三樹先生の記事、 ならびに 北大時報356号(1983年)の表紙写真解説記事を参考にさせていただきました。


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更新:1999.10.31 製作:北大オルガン研究会 <webmaster@organ.dyndns.org>